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講評

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■写真部門 (2019年)

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『写真力大賞』 大越祐子

 ものを写真として上手に捉える能力を持つ人は多いが、感性の違いは歴然と出てしまうものである。日常的でありながらさらりとしたこの画像のキレのよさは彼女が持つセンスから自然と生み出されるものなのであろう。影にはものの本質を表すとともに写っていないモノの世界、精神性の高みへと鑑賞者を引きずり込んでゆく大きな力がある。感傷に浸ることなく影そのものを美的に完成度高く捉えた秀作はこれまでになかった。出品してきた他の写真にも優れたものが多く、写真力への理解と本質を掴みとる力の両方の存在を強く感じた。これからが楽しみである。

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『優秀賞』 小熊美幸

 知的好奇心を刺戟する魅力的なものに目を向け、写真として的確に再構築している。彼女に備わる潜在的な写真力が遺憾無く発揮された一枚。右上からさしこむわずかな光からは一期一会の儚さをみてとることができる。

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『優秀賞』 谷川 彰

 秀でた感性と完全なフレーミングがこの画像を写真として無視できないものにしている。自然との出会いは常に驚きと輝きに満ちたものだが、それにレンズを向けて捉えられるか否かは撮影者に託されているのである。

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『優秀賞』 岩田 徹

 内容的には露出を抑える昔からの手法で光だけを印象的に捉えたにすぎないものだが、主題である木目の模様そのものにえも言われぬ魅力がある。まるで夜中に月明かりの中で目を凝らして見ていた記憶の中にある光景のようだ。

■作品部門 (2019年)

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一席『魚にあんこの入ったまんじゅうが食べたい』

W4切 計良秀実 

 布団のないベッド。まるで家の主を失ったかのような物悲しい部屋の様相が、長押に掛かる古びた額入りの写真や電話帳、つなぎ紐が垂れ下がる電灯や逆光に透けるカーテンなどと相まって少し距離感のある生活臭を漂わせている。タイトルを紐解くと他人が不用意に立ち入ることのできないプライベートな時空間であることが分かってくるのだが、それだけに興味は尽きず、いつしか作者の眼差しの奥に潜む人としてのやさしが素直に伝わって来る。人間とは何か。親と子とは何か。一生とは命とは何を意味するのか。自らの心にくぎりをつけた作者の心情が見事に表現されている一枚。堂々の受賞である。

本間淑子/消えた声(2L).jpg

二席『消えた声』

2L 本間淑子 

 いま(現在)を写した写真はみな貴重だが、人々の記憶に残らないであろう事実を記録しておくことはさらに大事な写真の使命である。昭和の時代には其処此処に聞こえていた子供たちの声。平成の30年の間にすべては変わっていった。令和という時代はこれからの人達に委ねるとして、自分が生きてきた証がここに一つある。レンズを向けた作者の気持ちが伝わって来る。

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三席『15年目』

2L 2枚組写真 本間 隆

 中越地震に限らず甚大な被害をもたらした災害が人々の記憶から消えることは決してないだろう。この写真が示しているものは、普段我々が気づくことのない自然の脅威、人間の存在をも飲み込んでしまいかねない本当の恐怖なのである。

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