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第7回「写真力」展 2019

『写真力大賞』 大越 祐子

 ものを写真として上手に捉える能力を持つ人は多いが、感性の違いは歴然と出てしまうものである。日常的でありながらさらりとしたこの画像のキレのよさは彼女が持つセンスから自然と生み出されるものなのであろう。影にはものの本質を表すとともに写っていないモノの世界、精神性の高みへと鑑賞者を引きずり込んでゆく大きな力がある。感傷に浸ることなく影そのものを美的に完成度高く捉えた秀作はこれまでになかった。出品してきた他の写真にも優れたものが多く、写真力への理解と本質を掴みとる力の両方の存在を強く感じた。これからが楽しみである。

『一席』 ー 魚にあんこの入ったまんじゅうが食べたい ー 

                  W4切 計良 秀実 

 布団のないベッド。まるで家の主を失ったかのような物悲しい部屋の様相が、長押に掛かる古びた額入りの写真や電話帳、つなぎ紐が垂れ下がる電灯や逆光に透けるカーテンなどと相まって少し距離感のある生活臭を漂わせている。タイトルを紐解くと他人が不用意に立ち入ることのできないプライベートな時空間であることが分かってくるのだが、それだけに興味は尽きず、いつしか作者の眼差しの奥に潜む人としてのやさしが素直に伝わって来る。人間とは何か。親と子とは何か。一生とは命とは何を意味するのか。自らの心にくぎりをつけた作者の心情が見事に表現されている一枚。堂々の受賞である。

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