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Tsutsuba Taizan Photo Instruction +
※編集でも加工でも何でもできるデジタル画像の時代だからこそ、写真というものについて深く知る必要がある。
写真の力とは…
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■さて写真にとって大事なことは「事実を写しとる」ということでした。おや~、何処からか不満気な声が聞こえてきました。「これただ写しただけだよね。」「見たままを写すのならわざわざ写真に撮る意味がないだろ。」「せめて背景をボカすとかしなきゃ主題が生きてこないよ…。」はい、その通りですね。私もそんな風に思ってました。25年くらい前までは…。でも違います。はっきりと言いますが違います。ある日ただ写しただけなのに写真になると何かが違ってくることに気がついたのです。
■このことを私は「同一性の差異」と言うことにしています。カメラは現実を鏡写しのように超リアルに写しとりますね。そっくりそのままですね…。然しです、何かが違うんですよ。何を言ってんだこの野郎は… と仰有る方はお手持ちのデジタルカメラで目の前の現実をパシャッとスナップ感覚で写してすぐに再生してみてください。うまくいけば「ん~確かに何か違うなぁ」と思える写真がとれているはずです。
■実はすべてのものというのは意識の中で互いに関係しあい相対的に繋がっているんですね。自分も含めて時空間の中でつながった存在としてあるということです。したがって我々は普段は物事に対して相対的な判断のもとにそのものの価値というのを見出しているわけです。しかし写真はその物事を相対的な価値世界から切り離します。時空間を一瞬のうちに切り取り過去のものとしてしまいます。我々は、切り取られ過去となってしまったものを見るとき初めてそこに写っているものを他と関連づけたり真や善や美を問うことなく絶対的なものとして見つめることができるようになるのです。絶対的なものとして見つめるとは、自分がいま存在している時空間とは別なものとして、写っているものの実態を冷静に見てとれるということですね。
■例えばゴミ箱はゴミ箱であり、それ以上でもそれ以下でもない。普段の生活の中で考えれば、つまり相対的に捉えればそういうことになりますね。然しですよ。写真に写っているゴミ箱をじーっと見ているとその存在感やらシチュエーションやら、何故こんな形なのかとか元々ゴミ箱って何なんだ、みたいな思いが頭の中にジワジワ~と浮かんできて…結構これが面白いんですね。もちろん個人差はありますよ…。
■写真画像というのはビデオのように動くわけではないし、とても細密ですから超~具体的で分り易いんですが、それは単に物事の皮相、表面を捉えているのにすぎません。静止画なのでじっくりと目を凝らして見つめてみてください。いままで気づこうともしなかったモノの実態に、その不思議な存在感に触れることができます。
■写真力とは、事実を忠実に写すことでそのものが何ものであるかに迫れるという写真本来の性質に沿った力のことなのです。ですから「おや、これはなんだろう?気になる…」と思ったら直ぐに写してみて下さいね。時々ですが新たな発見がそこにあります。大事なことは、自分が願うもう一つの現実を写そうなんてあまり意気がらないことです。それは絵画のような自由表現に長けたジャンルにまかせておいてくださいね…。
★写真は記録と表現という二つの性質をもっています。写真力で説くのは記録という性質の方です。では表現というもう一つの性質とは一体何でしょうか? 次回は番外編として写真の持つ表現性へと話を進めてまいります。これが分かると写真力への理解は一層深まることでしょう。もしかするとあなたの写真ライフそのものが根底から変わってしまうかもしれませんよ…。